株式会社 進明技興 進明テクノ

AK2カッター工法

AK2 cutter method
ホームAK2カッター工法

既存場所打ち杭を地中で切断できる『AK2カッター工法』

我が国の社会資本ストックは高度成長期以降に整備されたものが多く、建設から50年以上が経過するビルや公共施設が増加している。これからインフラ整備がもたらす恩恵を次世代へ継承するためにも、適切な更新計画が必要である。次に都市に目を向けると、訪日外国人旅行者の増加や企業の本社機能が都市圏に集中するなど、オフィスビルの空室増加や宿泊施設が不足傾向である。しかし、首都圏以外の都市は人口の空洞化が進行しており、都市の再開発が進行している。これから都市は、新たな再構築を行うためにも土地の有効利用を重ねながら発展が望まれている。
新しい都市の変化に伴い既存ビルが解体され、同時に基礎杭も除去される傾向にある。特に杭径の大きい既存場所打ち杭の除去は、全回転型オールケーシング掘削機(以下、全旋回機という)を用いて鉛直に分割して切断するケースが多い。この場合、鉛直に杭全長を切断するため、その重量が大きすぎて地中から取り出せない場合がある。取り出せない場合は小さく破砕しなけれぱならないが、ケーシング内で破断した杭の大きさが予想できない場合が多いため、クレーン揚重能力を超える場合も少なくない。これらのことから、作業進捗が不安定の場合も多く、既存場所打ち杭の地中からの除去は環境面・安全面・コスト面において問題を抱えていた。
この問題を解決するために、既存杭を水平方向に切断できる工法が望まれていた。

特徴 全旋回機の大きな回転力を利用して、地中にある既存杭を安全な長さ・重量で取り出せるように水平切断する工法である。この工法は、低騒音・低振動・工期短縮が可能となり、かつ安全に杭を地中から取り出すことができる。また、ケーシングの刃先の損傷も少なく、全旋回機に与える負荷も小さくなり、環境にやさしい工法として期待が持てる。
  1. 既存杭を自由な位置で切断できる。
  2. チゼルの自由落下に伴う振動・騒音が低滅される。
  3. 安全な重量で杭塊を取り出せる。
  4. 他の工法に比べ施工が安全である。
施工方法 ファーストケーシングの内面に装着した傾斜スライドレールと水平刃が、ロッドを介して油圧により上下動する。この水平刃が既存抗にくい込み、ケーシングが回転することで既存抗の鉄筋が切断できる。
  1. 抗芯に設置した全旋回機によりケーシングを計画深度まで回転圧入する(図-1)。
  2. ケーシング上部に油圧ユニットを取り付け、水平切断刃にロッドを接続する。リモコン操作により油圧ユニットが作動する。水平切断刃を移動させながらケーシングを回転させる(図-2)。
  3. 同時にケーシングを引き上げながら抗体の抗主筋を切断する。
  4. 水平刃を元の位置に戻した後に上部の油圧ユニットを取り外し、セリ矢により抗を切断(図-3)。
  5. ハンマーグラブをケーシング内に挿入し、切断された抗体を引き上げる(図-4)。
  6. 引き続きケーシングを計画深度まで回転圧入する。
  7. 以降2~6を繰り返す。

装置の説明

水平切断刃

水平切断刃を押し出し、引き戻すための油圧シリンダーを配置した簡単な構造となっている。写真-1に水平切断刃の状況を示す。

油圧ユニット

油圧シリンダーに供給される油圧源は、ケーシング上部に設置している。油圧ユニットはケーシング上部に固定されており、ケーシングの回転とともにユニットも回転する構造となる。また、油圧ユニットはエンジン付きで独自動力源を持っており、他機器に依存せず単独で動作が可能となっている。写真-2に油圧ユニットの外観を示す。

切断状況

AK2カッター工法による取出し状況、既存杭の切断面を示す。写真-3、4にその状況を示す。写真-5は鉄筋の切断状況を示す。

実用化に向けて

適用範囲

AK2カッター工法に使用する機器はφ2,000mm級の全旋回機である。適用撤去杭径はφ1,500mmである。水平切断刃はφ2,000mmケーシング内側に設置した構成となっていることから、掘削から埋戻しまでの間、掘削孔はケーシングにより保護されているため地山の崩壊や緩みなどを発生することが少なく、周辺構造物に影響を与えない撤去工事が可能である。また、この構成により既設杭の撤去深度(切断深度)は任意に設定できるため、必要範囲のみの撤去が可能である。
また、掘削下端まで掘削孔がケーシングにより保護されていることから、撤去後の埋戻しはトレミー管を使用しての流動化処理土・発生土などによる埋戻しなどが選択できる。
AK2カッター工法のもう1つの特徴は、水平切断刃による切断は杭主筋を切断することを目的としている。切断完了後は、杭主筋の内側にコんクリートが残った状態となるが、せん断カに弱くセリ矢を入れてケーシングを回すことで容易に切断できる。この方法により、切断に要する時間が短縮された。

AK2カッター工法の実用化に向けて

操作パネルによるビジュアル化

油圧シリンダーにストロークセンサを取り付けたことで操作パネルに数値が表示され、水平切断刃の移動量を知ることができる。地中での切断刃の移動量を把握するために操作パネルを設けた。切断刃の制御は無線式となっている。操作パネルのモニターの動作状況を写真-6に示す。

操作をシンプルに

操作盤での実質的な操作は「シリンダーを伸ばす」と「シリンダーを縮める」の2ポタンのみに限定し、刃先の操作を容易にした。今後も開発を続け、全旋回機の回転トルクのデータも取り込むことで半自動化を目指す。操作盤を写真-7に示す。

切断刃の耐久性向上に向けて

水平切断刃の耐久性がさらに向上すると、切断速度のアップが期待できる。現在、切断刃に使用するビットの硬度・形状を開発中である。ビットの硬度・形状の変更による鉄筋の切断速度・状況を確認している様子を写真-8に示す。

AKカッター

杭径がφ1,000mm、φ1,200mmにおいては、油圧ユニットを伴わない水平切断刃が固定式のタイプがある。水平切断を従来のオールケーシング工法の機材に写真-9のAKカッターを取り付けることで、容易に対応ができる。

施工事例

高規格堤防整備に伴う既存場所打ち杭撤去工事

都市部の河川改修による高規格堤防整備に伴い、既設マンションが取り壊され、それを支えていた基礎杭もすべて除去することになった。鉄道営業線に近接していることに加え、供用中の工場も隣接していたことから環境にやさしい工法が必要であった。
場所打ち杭(φ1,600mmx23.0m)の撤去をAK2カッター工法で実施した。そのときの杭撤去後を写真-10に示す。

おわりに

既存場所打ち杭の水平切断方法のアイデアは、2005年頃から開発を手掛け、2008年に開発者が特許を取得した。
その後、実用化が行われ、ACグループ内でさらなる改善を行った。
ACグループは、2014年10月に㈱ハンシン建設を含め全国の主要都市に拠点を持つ施工会社とメーカー(㈱進明枝興、丸井重機建設㈱、ミツワ興業㈱、総合基礎㈱、山陽土木㈱、宮崎基礎建設㈱、朝日技研㈱、㈱エーコー、他2社)が集まり、社会貢献と業界の発展向上を図ることを目的に発足した。
今後もACグループは、AK2カッター工法の技術的な改良を重ね、安全で環境にやさしい工法を目指したいと考えている。
 【特許第4106374号】《AK2カッター工法に係る特許》
  発明の名称…既存杭の破壊工法
 【特許第3683229号】《AKカッター工法に係る特許》
  発明の名称…既存杭の除去工法及び装置

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