実用化に向けて
適用範囲
AK2カッター工法に使用する機器はφ2,000mm級の全旋回機である。適用撤去杭径はφ1,500mmである。水平切断刃はφ2,000mmケーシング内側に設置した構成となっていることから、掘削から埋戻しまでの間、掘削孔はケーシングにより保護されているため地山の崩壊や緩みなどを発生することが少なく、周辺構造物に影響を与えない撤去工事が可能である。また、この構成により既設杭の撤去深度(切断深度)は任意に設定できるため、必要範囲のみの撤去が可能である。
また、掘削下端まで掘削孔がケーシングにより保護されていることから、撤去後の埋戻しはトレミー管を使用しての流動化処理土・発生土などによる埋戻しなどが選択できる。
AK2カッター工法のもう1つの特徴は、水平切断刃による切断は杭主筋を切断することを目的としている。切断完了後は、杭主筋の内側にコんクリートが残った状態となるが、せん断カに弱くセリ矢を入れてケーシングを回すことで容易に切断できる。この方法により、切断に要する時間が短縮された。
AK2カッター工法の実用化に向けて
操作パネルによるビジュアル化
油圧シリンダーにストロークセンサを取り付けたことで操作パネルに数値が表示され、水平切断刃の移動量を知ることができる。地中での切断刃の移動量を把握するために操作パネルを設けた。切断刃の制御は無線式となっている。操作パネルのモニターの動作状況を写真-6に示す。
操作をシンプルに
操作盤での実質的な操作は「シリンダーを伸ばす」と「シリンダーを縮める」の2ポタンのみに限定し、刃先の操作を容易にした。今後も開発を続け、全旋回機の回転トルクのデータも取り込むことで半自動化を目指す。操作盤を写真-7に示す。
切断刃の耐久性向上に向けて
水平切断刃の耐久性がさらに向上すると、切断速度のアップが期待できる。現在、切断刃に使用するビットの硬度・形状を開発中である。ビットの硬度・形状の変更による鉄筋の切断速度・状況を確認している様子を写真-8に示す。
AKカッター
杭径がφ1,000mm、φ1,200mmにおいては、油圧ユニットを伴わない水平切断刃が固定式のタイプがある。水平切断を従来のオールケーシング工法の機材に写真-9のAKカッターを取り付けることで、容易に対応ができる。
施工事例
高規格堤防整備に伴う既存場所打ち杭撤去工事
都市部の河川改修による高規格堤防整備に伴い、既設マンションが取り壊され、それを支えていた基礎杭もすべて除去することになった。鉄道営業線に近接していることに加え、供用中の工場も隣接していたことから環境にやさしい工法が必要であった。
場所打ち杭(φ1,600mmx23.0m)の撤去をAK2カッター工法で実施した。そのときの杭撤去後を写真-10に示す。
おわりに
既存場所打ち杭の水平切断方法のアイデアは、2005年頃から開発を手掛け、2008年に開発者が特許を取得した。
その後、実用化が行われ、ACグループ内でさらなる改善を行った。
ACグループは、2014年10月に㈱ハンシン建設を含め全国の主要都市に拠点を持つ施工会社とメーカー(㈱進明枝興、丸井重機建設㈱、ミツワ興業㈱、総合基礎㈱、山陽土木㈱、宮崎基礎建設㈱、朝日技研㈱、㈱エーコー、他2社)が集まり、社会貢献と業界の発展向上を図ることを目的に発足した。
今後もACグループは、AK2カッター工法の技術的な改良を重ね、安全で環境にやさしい工法を目指したいと考えている。
【特許第4106374号】《AK2カッター工法に係る特許》
発明の名称…既存杭の破壊工法
【特許第3683229号】《AKカッター工法に係る特許》
発明の名称…既存杭の除去工法及び装置